生活習慣病とは、食事・運動・喫煙・飲酒・休養のとり方などの日々の生活習慣が、その発症や進行に関係している病気のことです。
病気の原因には、生活習慣の要因が強く関わっていますが、細菌やウイルスなどの病原体、有害物質などの外部環境の要因、何かの病気になりやすい体質が親から子へ引きつがれる遺伝的な要因も関わっています。
初期の段階では、特に大きな自覚症状はありません。しかし、長年続くと動脈硬化が進行し脳血管障害(脳梗塞、脳出血)や冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)が発症したり、がんなどの深刻な病気を引き起こします。
主な病気に、糖尿病、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症、肥満症などがあります。
これらの病気は、生活習慣の改善が、病気の改善や発症の予防につながります。
予防に重点が置かれる一方、早期発見が重要です。健康診断での体重測定や血圧測定は、肥満症や高血圧の発見に役立ちます。また、血液検査では、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症が疑われることもあります。
コレステロールは主に肝臓でつくられ、からだの細胞やホルモンをつくるのに使われ人体にとって重要な役割をはたしています。コレステロールはLDLによって肝臓から体のすみずみまで運ばれ、増えすぎたLDLコレステロールは動脈壁にたまりやすく動脈硬化を促進するので悪玉コレステロール、余分なコレステロールはHDLによって肝臓へ送り返され、動脈壁にたまったコレステロールを取り除いたHDLコレステロールは動脈硬化を抑制するので善玉コレステロールと呼ばれています。中性脂肪は、人体にとって大事なエネルギー源で、過剰なものは肝臓や脂肪に蓄えられます。中性脂肪が増えると、善玉のHDLコレステロールが減り、悪玉のLDL-コレステロールが増えて、動脈硬化が促進します。
脂質異常症とは、血液中のLDLコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)の値が高すぎたり、逆にHDLコレステロールの値が低すぎる状態をいいます。
空腹時採血(10時間以上の絶食採血)で、LDLコレステロール 140mg/dL以上を高LDLコレステロール血症、トリグリセライド 150mg/dL以上を高トリグリセライド血症、HDLコレステロール 40mg/dL未満を低HDLコレステロール血症と診断します。
脂質異常症は、基本的に症状はなく、身体所見にはとぼしいですが、皮膚に特徴的な黄色腫を生じたり、眼球に角膜輪と呼ばれる白い輪がみられたりします。
日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、個々の患者で危険因子の評価を行い、LDLコレステロール管理目標値を決定しています。一次予防は、低リスク群 LDLコレステロール 160mg/dl未満、中リスク群、LDLコレステロール 140mg/dl未満、高リスク群 LDLコレステロール 120mg/dl未満です。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版が7月4日発刊されました。主な改訂点を記載します。
トリグリセライドは食事の摂取後は値が上昇するなど変動が大きい。また空腹時でも非空腹時でも値が高いと将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症や死亡を予測することが国内の疫学調査で示されるなどから、随時(非空腹時)トリグリセライド 175mg/dl以上が高トリグリセライド血症に加わりました。
脂質管理目標値設定のための動脈硬化性疾患の絶対リスク評価手法として、吹田スコアは冠動脈疾患発症のみをエンドポイントとしていましたが、今回は冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をエンドポイントとした久山町研究のスコアが採用されました。
糖尿病がある場合のLDLコレステロールの管理目標値について、末梢動脈疾患、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、または喫煙ありの場合は100mg/dl未満とし、これらを伴わない場合は従前どおり120mg/dl未満としました。
二次予防の対象として冠動脈疾患に加えてアテローム血栓性脳梗塞も追加し、LDLコレステロールの管理目標は100mg/dl未満としました。さらに二次予防の中で、「急性冠症候群」、「家族性高コレステロール血症」、「糖尿病」、「冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併」の場合は、LDLコレステロールの管理目標は70mg/dl未満としました。
高血圧とは、心臓から送られてきた血液が、何らかの理由で血管の中を流れる量が多くなったり、血管が細くなったりして、血管の壁にかかる圧力が高くなった状態のことです。心臓が収縮して血液を全身に送り出すときの血圧を収縮期血圧(上の血圧)といい、心臓が拡張して次の拍出の準備をしているときの血圧を拡張期血圧(下の血圧)といいます。
診察室で測定した血圧(診察室血圧)が140/90mmHg以上、あるいは家庭で測定した血圧(家庭血圧)が135/85mmHg以上の状態が続けば、高血圧と診断されます。日本高血圧学会による高血圧治療ガイドラインに、高血圧の診断基準、年齢や合併症の有無により異なる降圧目標が示されています。
診察室で医師の前で緊張して血圧が高くなる(白衣高血圧)や診察室では血圧が正常でも、家庭などほかの場所では血圧が高くなる(仮面高血圧)が知られています。家庭でも血圧を測定し、きちんと血圧を管理することをお勧めします。
高血圧に自覚症状は、ほとんどありません。血圧が高度に上昇した場合、頭痛やめまい、吐き気、倦怠感、肩こりといった症状を伴うことがあります。
高尿酸血症とは、血液中の尿酸が高い状態で、性別、年齢を問わず、血清尿酸値が7.0mg/dL以上で診断されます。
尿酸が高いだけでは、自覚症状はありません。進行して尿酸が過剰になると、体内で結晶となりたまることにより、痛風や尿路結石を発症し症状を自覚するようになります。
痛風は足の親指の付け根など小さい関節に生じることが多く、激烈な痛みや発赤、熱感、腫脹といった炎症反応をみることがあります。その他、くるぶし、膝、肘などでも起こります。高尿酸血症や痛風・尿路結石は、男性に圧倒的に多い病気です。
予防には、食事の量とともにアルコール摂取を減らし、プリン体(肉・魚などに多く含まれます)の摂取を控え、水分や野菜を多くとり、適度な有酸素性運動を継続的に行うなどが有効です。
肥満とは、脂肪が過剰にたまった状態で、BMI 25kg/㎡以上のものを指します。
体格指数:BMI(body mass index)=体重(kg)÷[身長(㎡)]
肥満症とは、肥満があり、それが原因で糖尿病や脂質異常症、高血圧、高尿酸血症、睡眠時無呼吸症候群などのさまざまな健康障害が引き起こされ医学的に減量を必要とする病態を指します。
これまで肥満と遺伝との関連が指摘されてきましたが、近年、生活習慣の関与が着目されています。食習慣の変化や運動量の低下などにより、摂取エネルギー(食事)が消費エネルギー(運動)を上回り、過剰分が脂肪として体内にたくわえられる、すなわち肥満につながります。肥満の成因として重要なのは遺伝よりも生活習慣といえます。
肥満の予防・治療には、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランス改善、すなわち摂取エネルギーを減らすことと消費エネルギーを増やすことが重要となります。